夜がこのまま暗闇へ沈んでも

 人は食べなきゃ生きられないんです。どんなに悲しくても、食べて力に変えなきゃならないんです。木皿泉の『昨夜のカレー、明日のパン』を読んで、そんなことを思いました。誰かと一緒にご飯を食べて、お喋りして、笑い合う、そんなささやかな日常こそがいかにかけがえのないものであったか、幸せの真っ只中にいる人にはなかなか分からないものでしょう。

 振り返ってみて、いかに幸せだったかを思う、最近はそんな毎日です。美味しいものを食べた時、あなたがこれを食べさせてあげたいと思う人は誰ですか?それこそ愛だね。今日は本棚の整理と積ん読の解消に精を出しました。整理してみると、頂いた本などがポロっと出てきます。ぱらぱらと頁を捲ると、その人の感性が浮かび上がってきてなかなか面白い。

 私は人の本棚を見るのが好き。アルファツイッタラーの独り暮らしおばさんの本棚を見るのが好き。その人の人となりが滲み出ているような気がしてさ。そんな私は部屋にお花を飾ったり、観葉植物のお手入れをしたり、お香を焚いたり、あらゆる手を尽くしておうち時間を快適に過ごそうとしてきました。

 そして、快適に過ごそうと手間隙をかけた時間こそ、そんな何気ない時間こそ満ち足りていたのだと分かりました。自分だけのお城が快適なのは、やはりいいこと。自分に手間隙をかけるのもやはりいいこと。私は最初、今流行りの韓国風インテリアのお部屋作りを目指していました。

 しかし、色々試行錯誤していくと、画一的なものにしっくり来なくなったんです。好きな絵画のポストカードやジョンハンの写真などをうるさくならない程度に飾り、お気に入りの小説もディスプレイしてみると、次第に木皿泉のご自宅のような、どこか温もりのあるお部屋に近づきました。

 その時、木皿泉のご自宅に惹かれるのは、お二人がそこで生活している匂いを感じられるからだ、と気付きました。私が追い求めた今流行りの韓国風インテリアには、生活の息吹きがなかなか感じられません。おしゃれですよ、おしゃれなんだけど、そこに縛られるのはもう止めました。ポストカードも流行りのマティスではなく、小説『わたしを離さないで』の表紙をコピーして飾りたいんです。

 私が日々を生きている足跡を残すような、そんなお城にしたいんです。部屋は心の鏡だ、とお手入れしていると、どんどん愛着が沸いてきます。物事は全て情であり、愛着です。色んなことに愛着を持てるように、好きなものを増やしたい。そんな今日この頃です。