私は宮本輝の『胸の香り』から彼の作品を好むようになり、短編集は好きでよく読んでいたのですが、ある時ふと長編も読んでみようと思い立ち『春の夢』を手に取ったのです。『春の夢』は貧乏な大学生が優しく気高い恋人との日常や、バイト先での人間関係などを通じて成長していく青春物語なのですが、どうしても「貧乏」がつきまといます。
彼の作品には貧困が常に側にあり、その中で必死に生きる市井の人々に焦点が当てられた作品が多いように思います。『泥の河』がまさにその真骨頂ではないでしょうか。まだ街全体が貧しかった昭和のあの頃。
その中でも一際貧しく、船上生活を余儀なくされていた兄妹とその母親。その兄妹と親しくなり、一体船上生活でどうやって生計を立てているのかを遂に知ってしまう少年の視点から、貧しさの哀しみを訴えかけてくる名作です。
映画化もされ、田村正和の父親が良い味を出していました。顔もタイプ♪ま、そんなことは置いといて、彼の作品の中には貧しさを憎む心と、その中で懸命に生きる人々の清貧さが力強く画かれているように感じます。清貧の哀しみを味わいたい方は彼の作品をオススメします。

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